新潟大学人文学部

オリンピック競技からみるスポーツ用語の中国語対訳語定着過程
−野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール関連用語から−

菊池 剛(新潟大学人文学部)

本論文では、オリンピック種目である野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールの四種目について、1981年出版の工具書と2000年代出版の工具書を比較し、中国におけるスポーツ用語がどのように変化、定着してきているかを明らかにした。

「はじめに」では、本論でのスポーツ用語の定義と論文の目的、調査の方法を述べた。

「第一章」では、文化大革命などの政治状況にも目を向けながら、中国スポーツの発達過程をオリンピックの歩みとともに概観した。

「第二章」では、実際に1981年の工具書と2000年代の工具書を比較して、用語の変化をみていった。比較した結果、スポーツ用語の定着過程としてまず一つ目には、1981年の工具書では説明的な中訳しかなかったが2000年代の工具書ではしっかりとした定訳ができたこと(例1参照)、二つ目には、1981年出版の工具書にもその用語の定訳があったのだが2000年代の工具書ではその定訳がさらに簡略化してきたこと(例2参照)の二つに大きく分けることができた。1980年代、90年代の中国のスポーツ発展期を経てスポーツが人々の日常生活に深く根付いてきたからこそこそ、このような現象が起きたのだろう。

さらに、「オールスターゲーム」の中訳の変化に注目すると、“优秀选手队比赛”から“明星队比赛”となっていた。この「有名な選手」という意味での“明星”の用例を調べてみると1970年代、またはそれ以前ではあまり見つけられなかったが1980年代に入るとこの意味での“明星”が新聞や雑誌などで数多くみられるようになり(例3)、近年ではインターネット上でも頻繁にみられる。このような背景には国内外におけるスポーツ活動や対外交流がさらに盛んになったことが挙げられる、そして日常的に使われていくにつれて人々の間に定着していき、最近の工具書では“明星”という定訳がついたのではないかと考えた。

「おわりに」では、スポーツ用語の中国語対訳語の定着には、中国スポーツの発展を抜きにしては語ることができないとし、今後の展望を述べた。

「巻末付録」として、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールの用語対照表を載せた。


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