新潟大学人文学部

「文化政治」期朝鮮における朝鮮人警察官について

田邉 恵(新潟大学人文学部)

序章

植民地期の朝鮮人警察官についてこれまで正面から取り上げられてこなかったため、明らかにされていないところが多い。本稿の課題は、警察機構の末端治安維持力として存在した朝鮮人警察官について、組織的位置づけを中心に明らかにすることである。本稿では、「文化政治」と謳いながらも結果として警察力が武断統治期よりも増強された、「文化政治」期を対象に検討した。

第一章〜第二章

第一章では、植民地期朝鮮の治安維持政策において、重要な位置を占めていた警察制度が、いかなる変遷を辿っていったのか考察した。憲兵警察制度から普通警察制度へ転換した経緯、変遷を明らかにし、さらにいわゆる「文化政治」の中核を担った普通警察制度について詳しく考察した。

第二章では、朝鮮人警察官と日本人警察官の違いについて、職員数・教育程度・給与をはじめとして様々な角度から細かく検討し、朝鮮人警察官の組織的位置づけについて考察した。朝鮮人警察官と日本人警察官の間には様々な格差が存在していたことを明らかにした。

終章

目で朝鮮人の民族性を抹殺しながら、日本人との平等を意味せず、制度的・非制度的な差別が温存された。表面上朝鮮人と日本人は平等と謳ってはいたが、警察機構内でも様々な面で朝鮮人警察官は差別的待遇を受けていたのである。

本人警察官よりも明らかに低い地位とみなされ、差別的待遇を受けていた。待遇改善策も差別的待遇が全面的に廃止される程の政策ではなかった。安い賃金で雇われた朝鮮人警察官は、日本の朝鮮支配の末端治安維持力として直接民衆に接し、取り締まりをスムーズに行い、また民族意識の強い朝鮮人を分断するという役割を担ったのである。しかし生活のためにしかたなく「日本の手先」となった者は少なくない。

しかし一方で、警察官という立場を利用した者、日本から評価された者がいたことも事実である。

植民地期の朝鮮で、朝鮮人警察官が受けていた差別の存在については、これまで知られていた部分もあるが、本論文では、朝鮮人警察官を正面から取り上げ、差別的待遇を具体的に明らかにし、さらに朝鮮人警察官の実像に迫ることができた。


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